大井一彌  - Trilocation -
Novationコラボレーション スペシャルインタビュー

DATS、yahyelのドラマーとして活躍し数々のミュージシャンのサポートを行う実力派ドラマーであり、ドラムにエレクトロ要素を加えた独自の雰囲気とグルーブの楽曲を生み出すトラックメイカーという2つの顔を持つ注目のアーティスト大井ー彌とNovationとのコラボレーションによって生まれた楽曲- Trilocation - 。大井ー彌というアーティストのカラーとNovationのカラーが混ざりつつも互いの個性を最大限に感じられるこのパフォーマンスが生まれた過程や起源をお話しいただきました。

ー まずは大井さんの現在の音楽と制作スタイルをお聞かせいただけますか?

大井 : ドラムや打楽器の持つ身体性と電子音楽の融和を模索しています。


ー いつ頃からからこういったスタンスでの音楽を?

大井 : 戦前のジャズ、60年代のロック、90年代のエレクトロなど、ポピュラー音楽の黎明から順番に体験してきましたが、自分の音楽性がどこかに定まったことがなく、説明に苦労します。

感覚に任せて表現を模索するというのもアーティスト冥利に尽きますね。では今回の楽曲のコンセプトやイメージはどういったものでしょう?


大井 : 太古から未開の地に脈打つ悠久の時の流れ。という感じです。8、90年代に流行ったニューエイジ音楽の流れが好きで、メディテーション音楽、ヒーリング音楽と呼ばれるようなものの音像を現代風に表現したいと思いました。


ー なるほど、ヒーリング音楽の表現について、楽曲のタイトル”Trilocation”はbilocation(体外離脱)から名づけられたとのことですが、ヒーリング音楽と3人の分身、サウンドはどういった結びつきやメッセージ性が込められているんでしょうか?

大井 : サウンドデザインを全てリアルタイムで行うオーガニックなバンド演奏のようなものとは一線を画したいという意図があり、ある程度緻密にDAW上でデザインするサウンド感をベースに制作していきました。
ですがそれを動画というプラットフォーム上で表現するにあたって、音楽製作を終えたデータを聴きながらのミュージックビデオのようなアテ振り演奏の撮影にしてしまっては、今回使用した製品群である意味がないので、リアルタイムのシーケンス上でリアルタイムの録音やローンチを複数回行い、全て同じ場所に介在させるよう撮影し、制作と演奏とパフォーマンスを一体とするライブ映像作品を目指しました。また、スイッチを押せば無限に演奏を続けてくれる機械が普及しきった昨今の音楽製作の現場では、自分の制作物や自分の演奏の純度を如何に高く保つかが課題だとも言い換えることができます。
私は今回の作品を制作パフォーマンスするにあたって、可能な限り全ての音を自分一人でアウトプットしたいと思い、その結果三人に分身する必要があったので、一身二ヶ所存在Bilocationあらため一身三ヶ所存在Trilocationとしました。音楽的に純度を保つ必要性からこのタイトルに結びついた感じです。
超常的なもの、超越的なものへの憧れを曲には込めたので、視覚的にもその超常現象を顕現させてみました。


ー 普段はバンドでも作曲をされているそうですが、ソロとどんな違いや楽しみがありますか?

大井 : バンドでの物作りとは、アイディアが自分の手元を離れ、当初思い描いたものとは全く異質のものへと変容していってしまうことを楽しむ行為です。ソロでの物作りは、アイディアの原石をひたすら磨き続けるようなものだと思っています。


ー 今回はNovationとのコラボレーションということでしたが、楽曲や機材のイメージは元々あったものでしょうか?今回実際に製品を使って生み出されたイメージでしょうか?

大井 : 僕が作る楽曲は全てそうですが、楽曲のコードやメインのシーケンス等のMIDIノートを先に確定させたものがありまして、音色は後から決めていきます。今回はSUMMIT と CircuitTracks をいじってほとんどの音色を作りました。

ー 今回の楽曲で使用されたデバイスそれぞれにどのようなパートや機能等の役割を与えられたのでしょうか?できる限り詳しくお聞かせいただけますか?

大井 : LaunchpadProは、グリッドとベロシティに揺れを持たせたいビートの打ち込みパッドとして。また、ライブ演奏ではベースのシーケンス出しに使いました。CircuitTracksは、ループのビートのプログラミングに使い、音色もエフェクトも内蔵のものを使っています。SUMMITはほとんどのシンセサイザーの音色をこれで作りました。プリセット音色も幅広いですし、イチから作る作業も刺激的で楽しかったです。LaunchKeyMK3は、プラグインエフェクトやモジュレーションをトグルやフェーダーにアサインして、オートメーションの手書きに使いました。


ー ちなみに初めてNovation製品を使用されたのはいつ頃なんでしょう?

大井 : 大学生の頃、abletonLiveを使っている友人がLaunchPadを持っていて、触らせてもらったのが初めてです。

ー 普段はソフトシンセを中心にサウンドを作られているかと思いますが、今回も使用されていますか?

大井 : 今回SUMMIT とCircuitTracks 以外には、u-he のプラグインシンセtriple cheese と、puremagnetikのノイズジェネレーターを使っています。

ー ソフトシンセとハードシンセの大井さんの中での感触の違いや明確なポジションががあるんでしょうか?

大井 : 感覚的ですが、ハードシンセの方が、音量を下げても埋もれずに派手さを保ったまま居場所を作りやすいです。ソフトシンセは、プレーンな音で必要な定位や帯域を狙って作るのに向いているので自然とそういう使い方をしているかもしれません。


ー なるほど、では今回最もこだわったサウンドはどのあたりでしょう?

大井 : SUMMITで作ったアルペジエーターの音色がとびきりのお気に入りです。


ー 今回、新たにご使用いただいたグルーブマシンCircuitTracksはいかがでしょうか?

大井 : ボタンやパッドをあれこれいじりながら音を作っていく流れが楽しくて没頭してしまいます。パソコンで作る音楽とは少し違う、価値ある面倒臭さを感じました。


ー PCメインで制作していても音楽的な感覚はハードに頼りたくなる時がありますよね、CircuitTracksはさまざまなアーティストにご使用いただいていますが、みなさんそういった部分は共通して気に入っていただいているようです。

今後の活動で新しく挑戦したいことはなんでしょう?


大井 : 面白いビートの探求に邁進しつつ、もっと大勢に分身する作品も撮りたいです。


ー では今後コラボレーションするたびにどれだけ増えていくかも注目所ですね(笑)Novation製品は気に入っていただいているようですので、今後のコラボレーションを期待すると共に、分身すればするほど多様になれる大井さんとその楽曲の中で生きるNovationサウンドを楽しみにしています。

Profile

大井一彌
ドラマー/トラックメイカー
1992年6月12日生まれ。神奈川県出身。
2015年にDATS、yahyelに加入。
ドラムサポート、楽曲提供 等、ジャンルやカテゴリーを超えて幅広く活動する。


ホームページ:
https://www.kazuyaoi.com/




Trilocation 映像・写真監督
西村理佐 (Risa Nishimura)

パフォーマンスに使用された製品

Circuit Tracks [グルーブマシン]  製品ページへ >>>
SUMMIT [シンセサイザー] 製品ページへ >>>
LaunchPadProMK3 [MIDIパッド] 製品ページへ >>>
LaunchKey49MK3 [MIDIキーボード] 製品ページへ >>>